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マンガ家の日記(’02年7月〜12月)


日記:12月28日

「ファンタジイカクテル」の仕事に目途がついてきたので、決心をつけてかねてより検討の新しいパソコンを買いに行く。

現在のラップトップ型のものではマンガの原稿に使うには処理能力がまったく足りない。
「オレンジクラブ」のカバーイラストも毎回フリーズの恐怖に激しいいスリルに冷や汗を流し、処理速度の遅さに泣きそうになりながらの作業だった。いつフリーズするかわからない、しかし「保存」を押せばまた何分もジーッと待たなければならない。いや「保存」をしようとしたがためにフリーズしてしまうかもしれない、という具合。
こんなにストレスが大きくては、仕事にパソコンを使わなくなってしまう。でも、それはもったいない。
「愛人[AI-REN]」最終巻に臨むにあたって、心機一転、気合を入れる意味でもここはひとつパソコンを新調しよう。
それもデスクトップのデカいヤツだ。後戻りの効かぬヤツだ。

優先項目は処理速度の速さとメモリの大きさハードディスクの大きさで行こう。
プロセッサはPentium4以上だ。メモリは最初から増設して絶対1GB以上。ハードディスクは最低でも120GBだ。
あんまり詳しくはないが、目安はまあこんなところだろう。後は店員の人にいろいろ聞こう。
値段は少々高価かろうとだ。30〜40万円台までならひるむまい。(50万円以上なら一度家に帰ろう)
今年は半年以上ほとんど無収入で貯金で生きてたくせに、この年の瀬に大枚をはたくぜ。

「パソコンください。」
いきつけの電気屋へ行った。
目星を付けていた機種の有無を尋ねる。

しかし、残念!!
「すみません。ありません。
メーカーのほうでもう生産終了したそうです。シーズンの終わりなんですよ。
来月の終わり頃には各メーカーとも春モデルの発表があると思いますんで、よほどお急ぎでないならそれを待ってから購入されることの方をお勧めします。」

買って一ヶ月もしないうちに型遅れになるものをし知らん振りして売りつけようとはしない店員の人の正直さに感謝する。
でも、肩透かしだ。
大いに肩透かしだ。
このやり場のない購入意欲。
くう・・・。

ところで、新規パソコンは現在のところDELLかVAIOのどっちかにしようと考えている。
ほとんどVAIOで決まりだったのだが、DELLもいいなと思い始めてしまった。
どうしようかな。
また、来月その春モデルとやらが出揃ってからもう一度検討することにしよう。


日記:12月26日

有限会社モアのY編集長に仕事納めの挨拶を。
と思ったら仕事納めは明日だそうな。今日はまだ木曜だった。
それはともかく、
今年一年ありがとうございました。来年は新しい単行本を出します。

そうか、仕事納めは明日だったか。
と油断していたら白泉社のN氏よりTel。
仕事納めは明日だが、明日は編集部の大掃除でバタバタするので1日早く年末の挨拶と言うこと。
来年前半の大仕事は言うまでもなく「愛人[AI-REN]」最終巻の発表。
いよいよである。
どうぞよろしくお願いします。

何だか急速に年末気分。


日記:12月25日

「ファンタジイカクテル」ネネちゃんイラスト。ラフ。
今日はクリスマスだが描くのは早くもバレンタインネタ。

「ファンタジイカクテル」20ページ「お眠りラブ」。
ようやく作業が順調に流れ出す。


日記:12月24日

「あ、これでいいですね。」
「本当のところをおねがいします。」
Y編集長よりのTel。自分はすっかりしつこい。
「では、あと一箇所だけ気になるところが・・・。」
最初の修正の時に直して、これでいいとなっていた14ページ下段。
全体を直して通してみるとリズムが良くない。
ふむ・・・。
一番最初にカットしたコマを元に戻す。ただし内容は別のものにする。電話口でのアドリブ。笑いが漏れる。
手応えあり。これでイケる。
コンテ、これで決定稿。
うむ!!



散髪。
伸びていた髪と髭をさっぱりすると、散髪屋の鏡に別人が現れた。
真人間だ。
散髪屋の人「山から下りてきたみたいですね。」
まさに。



Merry Christmas!!


日記:12月23日

「ファンタジイカクテル」20ページ「お眠りラブ」。
コンテ修正稿を編集部にFAX。

引き続き本原稿の作画作業に入る。


日記:12月21日

どうか連絡がつきますように。
土曜日の編集部にTel。
Y編集長が出る。よかった。
コンテ再度、変更。スケジュール延長の許可を得る。
ご迷惑をお掛けします。

前回の修正作業時、あまり見直されなかった冒頭の2ページから5ページまでに問題がある。
一言で言えば、主人公とヒロインの間に自然な愛情が感じられない。
段取りセリフになってしまって、ぬくもりが感じられないのだ。
作者が手早く上手にまとめようとしたからだ。
これでは、心からの愛情を持って絵にしていくことは出来ない。

正直に言います。
「愛人[AI−REN]」の作業時間が1日1日なくなっていくことに、背中の毛が逆立ちそうなくらい焦って焦って焦って。
本当は1日でも早くこの作品を終わらせたくてしょうがない。早く早く早く。
でもダメですね。
そんな心根で描くことの出来る作品なんてあるわけがない。

胸がいっぱいになって息も出来なくなるくらいの愛情を感じているのでなければ。
ただの1枚も描けるものではない。
例えそれがたった20枚のエロ漫画であろうとも。
なりふり構わぬ必死の愛情がないのなら誰かに読ませるものは描けない。描いてはいけない。

もう一度、もう一度。コンテを見直していく。
もっと自然に。何気なく暖かい気持ちになれるように。ありったけの愛情をこめて。


日記:12月20日

眠たい。やたら眠たい。座っていることが出来ないくらい眠たい。
身体が描くことを拒絶している。

このコンテ、気に入らない。

おとといY編集長と
「これで今年中に上げなきゃいけない仕事は無事全部終わりましたね。」
と笑いあったばかりなのに。
コンテ今日までだったはずなのに。

それにしても眠たい。数時間と起きていられない。
時間がないのに。ただでさえスケジュールは遅れているのに。いろんな人を待たせているのに。
それでもダメみたいだ。
無理に仕事をしようとすると、スウッと意識が遠ざかる。たちの悪い冗談のようだ。
身体がこのコンテのまま描くことを断固拒絶している。
仕事を進めるにはコンテをやり直すのが一番の近道だ。


日記:12月19日

仕事、仕事。
働け私。


日記:12月18日

しっかり眠って、目を覚ます。



夕方。
リテイクしたコンテを編集部にFAX。
ほどなくY編集長よりOKのTel。

作業再開。


日記:12月17日

「ファンタジイカクテル」20ページ。
コンテ出来ず。
何が間違っているのか?何がいけないのか?どうすればいいのか?
描けば描くほど、これで出来た、と思っていた作品は、色褪せてバラバラになっていく。
泣きたい。

すんなり出来上がる作品なんてない。
だから、あきらめるな。意地になって喰らいついて、何回でも何十回でも。
投げ出さなければいつの日か必ず突破できる。
絶対良くなる。がんばれ。


日記:12月16日

Y編集長よりコンテにダメ出し。
久しぶりだ。
「ファンタジイカクテル」20ページ。
編集長曰く。主人公と女の子の心情がしっくり来ない、ギクシャクした感じ。女の子が何か冷たい感じがして、可愛く見えない。

Y編集長に質問を繰り返しながら、編集長が感じた違和感・問題点が何なのかを具体的なものにしてゆく。
描き上げたばかりの作者にはコンテの問題点は見えなくなっている。
と言うか問題点が見つからない、これでよしと言えるレベルまで来たから編集者にFAXしたのであるから、指摘を受けてもすぐにはピンと来ない。
しかし編集者が問題ありと言う以上は何かある。絶対に何かある。
どこだ?何がいけない?どこが問題になっている?

当初ラストページが良くないということだったが、次第にそこではなくもっと前のページに問題があると見当がついてくる。
14ページ下段と15ページ上段のコマに問題があることが判ってくる。なるほど、これではダメだ。
そして、ここが変わるとそれから以降が全部ダダダッと変わってくる。

電話口で修正の場面とセリフを決める。
何とかなりそうか。



深夜、夜明け前。

電話口で決めた修正の場面とセリフ。
実際に描いてみると、どうも面白くない。どうも違う。
とって付けたような感じだ。これでは修正しないほうがまだマシだ。いや、最初のコンテはやはりこのままではダメだ。
これでは描けない。
14ページの下段がダメだということは、それ以降の全てが狂ってきてしまう。
作業停止。
どうする?どうする?どうする?


日記:12月15日

「ファンタジイカクテル」20ページ作品。
ラフ、アップ。そのまま間髪いれず、本原稿に取り掛かる。

この作品をアップさせれば、次はいよいよ「愛人[AI-REN]」最終巻だ。


日記:12月10日

Amazonで注文していた「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」のDVDが届く。
本当は仕事をしなければいけないのだが、ちょっとだけ、などと言い訳しながら観始める。
途中からティッシュでは追いつかなくなり、タオルが必要になってしまった。



夜、白泉社N氏と定期Tel。
マンガを巡る商売のあり方について。
この話題はいつ話しても閉塞感いっぱいで、どこに向かって進んでも行き止まりになっているように見えて、話しているとすっかり凹んでしまいそうになるのだが、だからと言って逃げては通れないテーマだ。
長いTelになる。


日記:12月6日

「ファンタジイカクテル」20ページ作品、ラフコンテ。
昨日送った「ファンタジイカクテル」16ページ「くちびるからラブリー」、Y編集長の評判良く、嬉しい。


日記:12月5日

「ファンタジイカクテル」16ページ「くちびるからラブリー」&ネネちゃんイラストを編集部に送る。


日記:12月4日

今日明日はこれを仕上げる予定。


日記:12月2日

「ファンタジイカクテル」20ページ。ラフコンテ。



ところで、この前近所のスーパーでこんなのを見つけた。


日記12月1日

「ファンタジイカクテル」16ページ「くちびるからラブリー」。トーン作業もほぼ終了。
しかし、最終仕上げをする前に「ファンタジイカクテル」次回20ページ作品のラフコンテを先行させることにする。


日記:11月22日

「ファンタジイカクテル」1月号が届く。
約半年振りに自分の新作が載っている新しい雑誌だ。

頼子ちゃんは、実際にいたら彼氏以外の人の目から見たら多分ちょっとデブになってしまうのだろう。
彼女本人も少し気にしている。
5ページ目で彼女が読んでいるのはファッション雑誌の後ろの方のダイエット記事だ。
コンビニで今シーズン新発売の「超本格あんまん」を買うのに何か言い訳が欲しい。
しかし、彼氏は露ほどもそんなことは思っていない。
と言うより、このぽっちゃり感こそが無常に愛らしいと思っている。
だから、つい余計なことを言って、頼子ちゃんの不興を買ってしまう。
「今のままで全然いいじゃん。もうちょっとくらい増えてもいいくらいだよ。」
「絶対やだ。」

さて、やや太めな感じが上手く絵で出ているだろうか?
トビラの絵など、おなかの辺り通常よりも多めに肉をつけている。
胸や二の腕、脚などにもタプタプ感を意識してプラスしてみた。

それにしても久しぶりに、自分の作品が印刷されたものを初めて見る時の、いつもの感覚を味わう。
すなわち、とてもナーバス。
いつも、何を描いても、自分が取り返しのつかない大失敗をしてしまったとしか思えない。
数時間から数日は冷静には見ることが出来ない。
と言うか、次のヤツにのめり込む以外には心は晴れない。
因果な商売である。



「ファンタジイカクテル」2月号分。作業継続。
今回の絵の課題の一つは、お風呂用に巻き上げた髪を上手く表現すること。
作り物にならないように、きっちりしすぎず、ほつれ毛などで生っぽさを出すこと。後ろや横からの画面、うなじのおくれ毛にも注意すること。
ベタにするか、それとも白いままでいくか?


日記:11月21日

「ファンタジイカクテル」。
「いい感じですね。」
絵コンテに対する有限会社モアのY編集長の反応は上々。
よかった。
「何だかこんな娘、実際にどこかにいそうですね。」
とは、少し予想外の感想。

製作作業は地味に進行中。


日記:11月20日

「ファンタジイカクテル」コンテがついにアップする。
のろまが治らない。
ともかく作業を続行しよう。


日記:11月15日

しばらく前からギターを弾くことを日々の暮らしの中に復活させた。
「愛人[AI-REN]」の終わりごろからすっかり封印していたのだが、また弾くようになった。
消えてしまっていた指のギターだこも元通りになった。
自分にとってギターを弾くことは、それさえあれば寝食を忘れてしまえるもののひとつだ。
ギターを抱えていれば何時間でも何時間でも、しあわせでいられるという人種のひとりだ。

腕前のほうは、学生の頃から弾いているが少しも上手くなれない。
多分、生涯上手にはなれない。
だから1円にもならない。自分以外の第三者に何一つ益しない。
生産性とは対極にある行為だ。

趣味というのとはちょっと違う。

好きな楽器があるのとないのでは人生はきっと大きく違う。

「愛人[AI-REN]」#10で、あいが大屋根裏で見つけた古いギターを一生懸命練習する場面をボクはとても愛している。
夕方、イクルのお土産は真新しい弦。
いそいで袋から取り出す、輪っかになってるのを広げると、真新しい弦は夕日を浴びてきらきら光る。
音を合わせて。
弾き出すと、もうやめられない。イクルがご飯を呼びに来てもやめられない。指が痛くなっても、つりそうになってもやめられない。
セッションの場面の時のあいは多分Eのワンコードをずーっとジャンゴジャンゴやっている。
この一連の場面、ボクは本当に好きだ。



「ファンタジイカクテル」絵コンテ。


日記:11月14日

「ファンタジイカクテル」ラフコンテ、最終ページまで到達する。


日記:11月13日

「ファンタジイカクテル」16ページ絵コンテ、何度描き直しても描き直しても納得のいくものにならない。
どうにも手応えのあるものにならない。
だから描き始めることができない。
コンテは最後のページに行く前に途絶える。冷たくなってしまう。
何日経過しようと、描き始めることができない。
困り果てる。

突然、着想の根本部分に間違いがあることに気がつく。
今までのものは全て捨てることにする。徒労の烙印を押す。
もう一度、全部新しくやり直すことに決める。
これならいけるかも知れない。最終ページまで到達できそうな気がする。


日記:11月12日

「ファンタジイカクテル」16ページ、ラフコンテ・・・完成せず。

「愛人[AI-REN]」5巻の作業時間を少しでも多く確保するためには、「ファンタジイカクテル」の原稿を先行して描き貯めておかなければならない。
机上の計算では可能なはずだったのだが、前回の原稿アップから既に一週間。

自分は何が何でも連続して仕事をするということができない人なのかもしれない。


日記:11月5日

「ファンタジイカクテル」、原稿アップ。

引き続きネネちゃんのイラストに取り掛かる。


日記:10月31日

先日の仕事再開の記事にたくさんのお祝い(?)のメールをいただきました。
ありがとうございました。



仕事中。
数ヶ月ぶりの原稿描き。
何だか全部以前どおり。何か少しは変わったところがあるかと内心少し期待したが、いやになるくらい以前通りだ。
上手くもなっていなければ、速くもなっていなかった。(あたりまえだ)
劇的なものは何もない。
気に入った絵が描けて上機嫌になったり、作業が進まなくてイライラしたり、スケジュールの遅れにこの世の終わりのような気分になったり。
要するにいつも通りの仕事の日々。

それにしても毎日のスケジュールの遅れ具合の割合までまったく以前どおりとは。


日記:10月24日

「ファンタジイカクテル」絵コンテ。
とうとう描き上がった。ついに最後のページまでたどり着いた。描けた。
久しぶりだ。
マンガの絵コンテ、描けたぞ。

Y編集長「田中さんらしい感じのものですね。」
つまりいつも通りの普通の作品だということだ。

さあ原稿にかかれ。
スケジュールはこれまたいつもどおり大幅に遅れている。

さあ仕事だ、働け!!



励ましの言葉をくださった皆様、本当にありがとうございました。
冷やかしや謗りただのはひとつもなく、いっぱいの暖かさに勇気づけられました。
「愛人[AI-REN]」の5巻は来年になってしまいますが、必ず描き上げます。
「甘やかすんじゃなかった。」と思わせることのないようにしようと思います。


日記:10月1日

「ヤングアニマル」10周年記念企画での「愛人[AI-REN]」テレかが家に届く。
とてもいい出来に感激。カッコいいじゃん。

「愛人[AI-REN]」5巻、単行本構成。
#36〜#39までの前半を各話バラバラではなく、ひとかたまりの大きなクライマックスのブロックとして再構築する方針。
1巻からの全体の中での大きなクライマックスとなるように。


読者の皆様へ:「愛人[AI-REN]」5巻の発売が送れている理由について

お待たせして申し訳ありません。
待っていていただいてありがとうございます。

「愛人[AI-REN]」最終巻の第5巻は当初、02年の9月か遅くとも10月には発売できるようにしようと担当編集者の中澤氏とは話し合っていましたが、連載終了後私がコンディションを大きく崩してしまって予定通りの作業が出来なくなり、そのスケジュールは白紙に戻さざるを得ないことになりました。

腑抜けになってしまいました。
自分からマンガ家の能力が消えてなくなってしまいました。
日常生活は何の問題もなく送ることが出来る。本も読める、TVを観て笑うことも出来る、言動もいたってまともだし、文章を打つことも出来る、何ならイラストを描くことだって出来る。なのに、マンガを描くための集中力や判断力、構想力などだけが真っ白で全然働かなくなってしまいました。あるいは、そこにだけロックが掛かったようになって動かすことが出来ない感じで。
マンガ家の部分だけがきれいに消えてなくなってしまいました。
「愛人[AI-REN]」最終回以来、今日に至るも1枚のマンガも描くことが出来ないでいます。

連載終了前もちょっと「なんだかヤバいかも・・・」という気配はありました。でも「まあ少し休養すれば恢復するだろう」くらいに考えていました。
甘かったです。
まるで試合中は捻挫くらいだろうと思っていたのが、後になって「あれ?折れてる・・・?」となって、問答無用の長期欠場を余儀なくされたスポーツ選手みたいな気分です。



職業生命的にはかなりピンチなんですが、別に生命に別状のあるようなことではありませんので、大丈夫です。
マンガが描けなくなってしまったことを除けば、心身ともにいたって元気健康でピンピンしております。

必ず、復帰するつもりです。
人生はまだ終わっていないし、やり残した仕事もありますので。



一進一退、のろのろとしたペースですが、毎日少しずつ恢復に向かっています。
毎日、机に向かっています。

「愛人[AI-REN]」5巻の作業は続けています。
発売時期については、白泉社の中澤氏は「原稿が全部そろい次第、単行本化に動きます。待ちます。最後の最後まで納得のいく仕事にしましょう。」と仰ってくださっています。
作業の進捗は現在、全体構成とシナリオ、イメージスケッチの段階です。
まだこの段階で悪戦苦闘中です。でも、ずっとどうしても作品に接近できなかったのが、最近ようやく手応えを感じ出しました。
かなり面白いものになりそうな気がしてきました。

もし許していただけるなら、もうしばらくお待ちください。
必ず描き上げます。



ご心配をお掛けして、すみません。
待っていていただいてありがとうございます。

また近いうちに必ずお会いしたいと思います。
では。

2002年9月30日
田中ユタカ

追伸:
「ファンタジイカクテル」の11月発売の号で成年マンガに復帰します。
有限会社モアの吉田編集長に約束しました。必ず描きます。
久しぶりです。腕によりをかけて描きます。
どうぞ楽しみにしていてください。


日記:9月24日

Y編集長より「オレンジクラブ」が12月号で休刊になることを知らされる。
ショックだ。
先日自分がカバーイラストを担当したもので休刊号になるそうだ。

「オレンジクラブ」は本当にお世話になった雑誌だ。単行本もたくさん出してもらった。
初めての「雑誌のカバーイラスト」の仕事も「オレンジクラブ」でだった。とても張りきった。
長い間、自分のスケジュールは毎月毎月「オレンジクラブ」と「ファンタジイカクテル」だった。
先に「カクテル」で連載を持っていて、ある日Y編集長から「月2本大丈夫ですか?来月からオレンジクラブの方もお願いします。」と言われた時は嬉しかった。やった、これで月収が20万円に届く。
毎月「オレンジ」と「カクテル」の原稿を描く、それが自分の普通の生活になっていた。
なんとなく、ずっと続いていくことのように感じていた。

エロマンガを描くことで僕は生まれて初めて職業を持てた。
僕はちゃんとこの世の中で生きていける。
自分の稼ぎで堂々とこの世の中で暮らしていける毎日を、生まれて初めて得た。

「愛人[AI−REN]」が片付いたら戦線復帰のはずだった。絶対そうするつもりだった。
必ず戻ってきます、という約束はついに果たせなくなってしまった。
胸が、詰まる。

>「オレンジクラブ」様
長い間大変お世話になりました。
どうもありがとうございました。


日記:9月19日

久しぶりの一晩ぶっ通しの仕事をした。
疲れよりもハイな気分。コレよコレ。


日記:9月17日

オレンジクラブ、カバーイラスト。
Y編集長よりラフ画にOK。早速線画に取り掛かる。

それにしても、カバーの仕事を自分が得意だと感じられたことはまだない。毎回手探りだ。
おまけにこの間からはパソコン彩色になっている。送られてくる雑誌の入った封筒を開けては冷や汗三斗の思い。
自分「あの・・。編集長、やっぱり手塗りに戻しましょうか?」
Y編集長「いえ次回もこのままCGで行ってください。売れ行きも手塗りの時よりもいいですから。」
腕を上げるしかない。
今後もこの仕事を続けるならマスターしなければならないスキルだ。


日記:9月16日

今日から「ERZ」がBSで再放送。
我が家はそろってファースト・シーズンの時からこのドラマの大ファン。
4月からのZシーズンの放送を自分だけ見逃してしまったので、今度こそはちゃんと観るつもり。
でなければ、
(食卓にて)「昨日の回、グリーン先生大変やったね。あれきっと・・・(ハッ!!)」
自分(右手をあげて)「ごめん。僕まだ観ていないから(ネタバレ禁止)」
という大変気まずい場面が、また半年繰り返されることになってしまう。

「ER」は観るたびに集団で作り上げられる作品の持つ力に感心する。
脚本、盛り込まれた情報、キャラクターの作りこみ、その幅と分厚さに唸る。これはひとりの作家だけでは実現できない種類のものだと思う。
自分のマンガは徹底的な個人性に依って作られるのが流儀だが、こういうのにも密かに憧れる。
また、日本のTVドラマと作風の異なるアメリカンな脚本術にも、商売柄とても興味を引かれる。

とにかく続きが気になるし楽しみ。
もう第7シーズンにもなるのにまだこんなに面白いのは驚くべきこと。

最近では実はロマノ先生に萌え。


日記:9月15日

不意打ちで涼しい。
いけない。早急に長ズボンを買いにいかなくては。
近所に軽く穿いて行ける長ズボンを持っていないんだ。それから長袖のシャツか何かを。


日記:9月13日

ノン・スモーカーになって4ヶ月になる。

この間、タバコを吸う夢で目が覚めた。
たまらなく美味い煙だった。
喫煙者になったことのある者にしかわからなだろう快感。身体の隅々に、毛細血管の先の先にまでニコチンが高速に行き渡っていく、「ほぅうう」となる感じ。例えば、炎天下のバイトの肉体労働の休憩時間につける一服、しびれる、くらくらする、飢え切った全身の細胞が生き返る感覚。こってりした煙を肺の奥の奥にまで一気に吸い込む。

いかん。いかん。

もうニコチン・ガムも止めている。
目覚めにも、食事の後にもタバコを恋しいとはまったく感じない。
絶煙成功と言える。
ニコチン・パッチ、ニコチン・ガムで禁断症状の苦痛を感じることもほとんどなかった。科学の進歩。
きっかけを作ってくれた甥っ子に感謝。

しかし、まだ問題はある。
今になっても、仕事の時はタバコが恋しくなるのだ。
何年間も煙突のように煙を吐き出しながら、セリフを考え、コンテを切り、下絵を描き、ペン入れしてきたのが習い性になって精神に染み付いてしまっている。
なんだか喉の奥と右の二の腕辺りが乾いたようにムズムズして落ち着かない。
しょうがないので代わりにガムをめったやたらに噛んでいる。
歯磨きガムを箱で購入して常備してある。
しかし、ガムは危険だ。
夢中で噛んでいると、時に誤って自分の舌をガリッとやってしまう。
これは、痛い。唸るほどに痛い。



愛人[AI−REN]5巻カバーの試作案がメールで届く。
とても、よい感じ。


日記:9月11日

「愛人[AI-REN]」5巻単行本化作業。

読者が「これを読みたかったんだ!!」と言えるものを。驚きと喜びがあるものを。
黒澤明監督じゃないけど、読者が見たいと望んでいるものを見せよう。
これが大原則。これが大方針。
喜んでもらえるものを作りたい。うんと喜んでもらえるものを作ろう。

出版社側に出版するだけの価値ある「商品」として認められるものであること。
これが課題だ。目をそらしてはいけない。
温情に甘えたり、笑って頭を掻いたりしなくてはならないようなものであってはならない。
馴れもごまかしもなしだ。
堂々と商売人の前に立てるものでなければならない。
そうでなければ、自分はもう二度と世の中でちゃんと生きてはいけないことになるだろうと思う。
本当にそう思う。

僕は今後もこの世の中で生きていく。
この娑婆の当たり前のルールで、必ずまっとうに生きていく。

自分の良心に恥じることのない仕事でありたい。


日記:9月10日

連日、終日「愛人[AI-REN]」5巻のためのシナリオ、構成、スケッチなどを描き続けている。
現在、難所。なかなか困難突破が出来ないでいる。
机にしがみついてうんうん唸ったり、部屋の中をうろうろ歩き回ったり、突然思い立って書店に駆け込み紙袋いっぱい参考書を買い込んで泥縄勉強を始めたり、つまり、「いつもの」暮らし振りに戻りつつある。

まだまだ手探り手探り。
でも、そろそろとしたペースではあるが復帰に向けて始動中。
腑抜けていた身内に、手応えが蘇ってくる感覚。毎日少しずつ。



白泉社N氏と、構成について軽い打ち合わせ。
5巻は単体でも成立するようにする方向で。
その他いくつかの確認事項。



先日の誕生日にバースデー・メッセージを寄せてくださった皆様。
ありがとうございました。嬉しかったです。


日記:8月20日

宅配便のお姉さんを出迎えに玄関のドアを開けた途端、吹き込んできた風がすっと涼しかったので驚いた。
いきなり、秋。

このまま涼しくなってくれるといいのだけど。

子供の頃なら冬か夏どっちかを選べとなったら、迷わず夏だったと思う。
だけどここ1,2年の夏の暑さは凶悪なものに感じる。
夏派から宗旨替えしたい気分だ。
地球温暖化の影響か、それとも単に自分がおっさんになってしまっただけか。


日記:8月7日

今日からこのホームページにもメール欄を設けました。
どうぞよろしくお願いします。



「愛人[AI−REN]」5巻表紙、作業遅れ気味。



追記:
早速メールを寄せてくださった皆さん、どうもありがとうございました。


日記:8月6日

「愛人[AI−REN]」5巻カバーラフ、FAXしてN氏と確認。
折り返しと裏表紙に使うイラストもほぼ決める。
彩色は全てコピックに変えてPCにする予定。
自分にとって初めてのPC彩色のカバーになるので、不測のトラブルに備えるため、とにかく早め早めに絵のデータをフィニッシュしてしまいたい。・・・しまいたかったのだが、スケジュールは見事に遅れ気味。

N氏は相変わらず多忙。
こちらの事情による不必要なタイムロスはできるだけ避けたい。
無駄を少なくして、N氏には編集者本来の部分に集中できるようにしなくては。(最大の障害は自分が遅れること)


日記:7月8日

「愛人[AI−REN]」5巻の構成、いまだ輪郭がはっきりしてこない。
捕まえかけては、遠ざかる。
2ヶ月以上が過ぎたと言うのに、まだ手をつけないでいる。

連載の形で、一度完成してしまっているのが作業を困難にしているのかもしれない。
不足している部分、不備な部分をはっきりと捕らえなくてはならないのだが、そこだけで独立しているわけではない。
こちらをいじれば、あちらをいじらねばならず。ここに手を加えれば、あそこを放っておくわけにはいかずという具合に、何かやりかけるとすぐに収拾がつかなくなる。

いっそこのまま、本にしてしまうか?
いや、それは自分が同意できない。
ではどうする?

時間を掛けすぎるのはよくない。
これが現在の自分の出来ることだという割り切りが必要だ。

完全でなくてもいいということを自分に許可すること。
むしろ小さく安全にきれいにまとまってしまうことを恐れること。
正直であること。
自らの良心にのみ従うこと。

さあ、働け。


日記:7月6日

シャワーを浴びていて不意に思う。

易きに流れないこと。
自分の良心に照らしてやましくないこと。

道を選択する基準はそれだけで充分だ。後のことは、まあ何とかなるだろう。


日記:7月4日

もうずっとパソコンの前にへばりつく日々を過ごしているというのに、CGの腕前はなかなか上達しない。望むような水準には遠い。
何事につけ一足飛びというのはないものだ。


日記:7月3日

散髪へいく。
床屋へ行くのは基本的にかなり好きだ。
好きなのだが、いつも伸び放題になってもう我慢ならない、これでは近所を散歩すのるのも憚られると言う状態になるまでグズグズしてしまう。
自分の担当の理髪師の人はもう慣れてはいるが、2ヶ月ぶりで訪れた自分の蓬髪を見て呆れ顔で笑っている。
「次は8月になりますかね。」

街路樹や雑草の滴るような緑が美しい。
夏だ。夏だ。


日記:7月2日

「ファンタジイカクテル」ネネちゃんイラスト。
夏らしくビキニの水着にしてみた。
ちょっとグラビアアイドルっぽいイメージで。


日記:7月1日

税理士のN先生来訪。
税金のことなどをあれこれ。

N先生「ところで田中さんは、現在充電中というわけですか。」
自分「いえ、そういうわけでなないんですが・・・。」

・・・・・・・・・ろそろ収入の発生する仕事をしなきゃ。
ああ、とうとう7月になってしまった。

途方にくれているうちに時間だけが過ぎていく。


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