LDLコレステロール


コレステロールとは
コレステロールは、肉食動物では肝臓で糖質、脂質、タンパク質から合成されるステロイド骨格を持った物質で、細胞膜の構成成分として膜を強くする役割をし、さらに、重要なホルモンの材料ともなる脂溶性の重要物質だ。 多くは体内で合成されるが、合成される量の数分の一は、食物からも摂取される。
草食動物ではウサギは盲腸で、牛は第四胃で合成する。肝臓では合成されない。
これから見て、肝臓で合成する人間は、明らかに、ライオン、イヌなどと同じ肉食獣がルーツだ。 肉食獣はコレステロールを含む脂質の吸収をある程度抑制する。 草食獣は抑制する事を知らない、というより、植物には含まれないので、過剰になる心配はなく、抑制なんて必要なかったと思われる。
従って動物実験において、手軽に扱える草食獣のウサギを使い、血中コレステロール値が高いと……という実験は許せるとしても、高コレステロール食品を食べると血中コレステロールが増えて……という実験は不適当だ。
コレステロール自身は一つの有機化合物であって、善玉、悪玉なんて区別はない。 コレステロールが遊離した形(70%)か、脂肪酸とのエステルの形(30%)かの2つの存在形態があるが、善玉、悪玉の分類とは別だ。

身体が国とすると、細胞は一家庭のようなものだ。その家に当たる細胞膜は、主として脂質で作られている。
細胞膜の主成分として、またエネルギー源やホルモン原料として重要な脂質類を血液にのせて運ぶためには、そのままでは水とはじき合うため、水になじむタンパク質で包みこんだ血清リポ蛋白という形式のトラックで運搬される。

LDLはコレステロールなど細胞で必要とする脂質を満載したトラックだ。ただし、ここで言うコレステロールの約70%は、脂肪酸との結合物(エステル結合)である。 気球のように浮力のある油を満載しているため比重が小さく、低密度リポ蛋白の略称(LDL)で呼ばれる

HDLは、積み荷の少ない帰り便トラックと言えようか。脂質を満載していないため比重が大きく、高密度リポ蛋白(HDL)という。 血液循環中に、余分となっているコレステロールを拾い集めて積み込み、肝臓に立ち寄ったときに、そのコレステロールを荷下ろしする。 持ち帰られたコレステロールは、食物中の脂肪を乳化させる役割の胆汁の原料として利用される。

細胞膜は主として燐脂質二重膜で出来ているが、コレステロールはその膜を補強する用途と、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)や性ホルモンなど重要なホルモンの原料となる用途がある。 すべての細胞で必要とされるが、必要以上に多いと余分が表皮細胞の裏に取り込まれ、その内に活性酸素により酸化されてしまう。

酸化LDL
掃除屋マクロファージはただのLDLコレステロールには無関心だが、酸化されたLDLコレステロールがあると、これを除去しようとして食べる。 ところが、マクロファージはタンパク質分解酵素、糖分解酵素、核酸分解酵素などは持っているが、コレステロールの分解酵素を持っていない(人間の体内では、肝臓と副腎にしかコレステロール分解酵素はない)。
LDLが酸化されなければ、その内にHDLが回収してくれるので、泡沫細胞は出来ず、アテローム性動脈硬化(粥状硬化)は起きない。 そこで酸化防止作用の強いビタミンE、ビタミンC、ポリフェノールなどを十分摂取しておくことが望まれる。

はじめは、マクロファージは内皮細胞に有害な酸化LDLを食べて、また血液中に出てくる。 しかしマクロファージからは増殖因子が出され、その場所の平滑筋細胞が増殖する。中膜の厚い大動脈でマクロファージの出入りが繰り返されると、平滑筋細胞が血液から遠くなるため、VEGF(血管内皮増殖因子)を分泌し、毛細血管を呼び込む。
VEGFは同時に毛細血管の透過性を高めるので、血液中の過剰のLDLが漏れ出してくる。 そうすると、肥厚した血管壁の中に出来た毛細血管の周辺にLDLがたまり、それが酸化されると、マクロファージが感知して取り除こうと集まってきて泡沫細胞になると言う悪循環が始まる。

なお、このVEGFは、ガンも自分のところに血管を伸びさせ、栄養液をどんどん漏れ出させて増殖するのに利用していて、ガン患者で腹水に困る場合というのは、この浸出液だ。
糖尿病網膜症でも、VEGFによる血管増殖、血漿漏れ出しが視力低下を決定的にする。
良い働きでは、女性ホルモンの働きで、黄体形成や子宮内膜発育に際し血管新生を行う。

アテローム性動脈硬化、ガン、糖尿病網膜症に関し、血管新生が病変を拡大させるのは困ったものだ。

ついでながら、身体に必要な重要物質でも、一時的(あるいは瞬間的)な過剰が種々の病気の要因になっているので、注意すべきだ。
◇ コレステロール→動脈硬化→高血圧
◇ ブドウ糖→糖尿病(→動脈硬化)
◇ 酸素→活性酸素→ガン、老化、動脈硬化

参考文献: 児玉龍彦、浜窪隆雄 「考える血管」 講談社 BLUE BACKS B-1176

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